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大阪地方裁判所 昭和57年(わ)5107号 判決

裁判所書記官

東森隆一

本店所在地

大阪府茨木市橋の内二丁目一二番二八号

不二興業

株式会社

(右代表者代表取締役葉山彰子)

本店所在地

同府寝屋川市香里南之町二七番八号

不二商事

株式会社

(右代表者代表取締役葉山幸治)

本籍

同府枚方市宇山町七番

住居

同町七番一号

市場店舗貸付業、会社役員

葉山幸治

昭和三年一二月二九日生

本籍

同町七番

住居

同町七番一号

会社役員

葉山彰子

昭和九年七月二六日生

不二興業株式会社、不二商事株式会社、葉山彰子に対する各法人税法違反、葉山幸治、葉山彰子に対する各所得税法違反、各被告事件につき、当裁判所は、検察官鞍元健伸出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

一  被告人不二興業株式会社を罰金二八〇〇万円に、同不二商事株式会社を罰金一三〇〇万円に、同葉山幸治を罰金六〇〇万円に、同葉山彰子を懲役二年に、各処する。

一  被告人葉山幸治につき、その罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

一  被告人葉山彰子に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人不二興業株式会社(以下「被告会社不二興業」という。)は、大阪府茨木市橋の内二丁目一二番二八号に本店を置き、市場店舗貸付等を目的とする資本金二〇〇万円の株式会社であり、被告人不二商事株式会社(以下「被告会社不二商事」という。)は、同府寝屋川市香里南之町二七番八号に本店を置き、小売市場、スーパーマーケットの経営管理等を目的とする資本金二〇〇万円の株式会社であり、被告人葉山幸治は、同市萱島本町八番一九号ほか四か所において、トップセンターの名称で市場店舗貸付業を営んでいるものであり、被告人葉山彰子は、被告会社不二興業の代表取締役、被告会社不二商事の取締役、被告人葉山幸治の従業員としてそれぞれの経理事務全般を統括しているものであるが、被告人葉山彰子は、各被告会社及び被告人葉山幸治の各業務に関しそれぞれの法人税又は所得税を免れようと企て、駐車場賃貸収入、テレビ放映料負担金収入等の雑収入の一部を除外するなどの方法により各所得を秘匿したうえ、

第一  昭和五三年九月一日から同五四年八月三一日から同五四年八月三一日までの事業年度における被告会社不二興業の実際総所得金額が一億九一二五万六五二〇円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五四年一〇月二九日、大阪府茨木市上中条一丁目九番二一号所在の所轄茨木税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億三七三〇万四九五〇円でこれに対する法人税額が五三八五万二九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額七五四三万三七〇〇円と右申告税額との差額二一五八万八〇〇円を免れ

第二  昭和五四年九月一日から同五五年八月三一日までの事業年度における同会社の実際総所得金額が三億一三九六万五三七一円(別紙(二)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五五年一〇月三〇日、前記税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億四六七六万四一一三円でこれに対する法人税額が五七一八万七八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一億二四〇六万八二〇〇円と右申告税額との差額六六八八万四〇〇円を免れ、

第三  昭和五五年九月一日から同五六年八月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が一億七八七六万六六九三円(別紙(三)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五六年一〇月二四日、前記税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億二二八九万二七九一円でこれに対する法人税額が五〇四八万八九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額七三九五万六〇〇〇円と右申告税額との差額二三四六万七一〇〇円を免れ第四 昭和五四年三月一日から同五五年二月二〇日までの事業年度における被告会社不二商事の実際所得金額が八六一一万六四七二円(別紙(四)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五五年四月一七日、同府枚方市大垣内町二丁目九番九号所在の所轄枚方税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五八八二万七三四六円でこれに対する法人税額が二二三六万三六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額三三二七万九二〇〇円と右申告税額との差額一〇九一万五六〇〇円を免れ

第五  昭和五五年二月二一日から同五六年二月二〇日までの事業年度における同会社の実際所得金額が四一三万七三九円(別紙(五)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五六年四月二〇日、前記税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一八一五万五九〇〇円の欠損で、土地譲渡利益金額が六二六万五〇〇〇円でこれに対する法人税額が一〇三万二五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額二一八万八九〇〇円と右申告税額との差額一一五万六四〇〇円を免れ、

第六  昭和五六年二月二一日から同五七年二月二〇日までの事業年度における同会社の実際所得金額が一億六六一八万一五九七円(別紙(六)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五七年四月二〇日、前記税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六七二九万三三九円でこれに対する法人税額が二七〇六万九二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額六八六〇万三四〇〇円と右申告税額との差額四一五三万四二〇〇円を免れ、

第七  昭和五四年分の被告人葉山幸治の実際所得金額が四一七八万四〇〇一円(別紙(七)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五五年三月一一日、前記所轄枚方税務署において、同税務署長に対し、同五四年分の所得金額が二四三四万四八〇一円でこれに対する所得税額が四八三万三七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額一四〇一万七九〇〇円と右申告税額との差額九一八万四二〇〇円を免れ、

第八  昭和五五年分の被告人葉山幸治の実際所得金額が五六七一万七九五三円(別紙(八)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五六年三月一一日、前記税務署において、同税務署長に対し、同五五年分の所得金額が四二二九万三五三八円でこれに対する所得税額が一一四七万二四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額二〇一〇万二六〇〇円と右申告税額との差額八六三万二〇〇円を免れ、

第九  昭和五六年分の被告人葉山幸治の実際所得金額が六四二四万九三八九円(別紙(九)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五七年三月一三日、前記税務署において、同税務署長に対し、同五六年分の所得金額が四九五五万八九一八円でこれに対する所得税額が一五一一万六九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額二四一四万六七〇〇円と右申告税額との差額九〇二万九八〇〇円を免れ、

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一  被告人葉山幸治、同葉山彰子の当公判廷における各供述

一  被告人葉山幸治、同葉山彰子(六通)の検察官に対する各供述調書

一  収税官吏の被告人葉山幸治(二通)、同葉山彰子(二〇通)に対する各質問てん末書

判示第一ないし第三の各事実につき

一  高田和征、徳本幸治(昭和五七年八月二〇日付け)、渡瀬貴夫各作成の「確認書」と題する書面

判示冒頭ないし第四の各事実につき

一  稲浦澄子、鷹尾貞彦(五丁表四行目から同丁表最終行までを除く。)、安東信雄、鈴木修道、徳河千喜、藤川清林忠道(八項を除く。)、佐竹和男、星田泰弘、榎本喜一、赤井義之、山家和男(六項を除く。)、宮本佳嗣、井上博皓の検察官に対する各供述調書

一  収税官吏の川口利子、中島美一、稲浦澄子、上田清子(二通)、鷹尾貞彦、中島清満、臼井雅行、竹田達雄(一四丁裏一行目から一五丁裏終わりから三行目まで、一八丁表二行目から二一丁表最終行までを除く。)安東信雄、鈴木修道、徳河千喜、藤川清、林忠道(第七問答を除く。)、堀内克哉、佐竹和男(二通)、山村善彦、大前嘉美渡辺彰、北見裕、星田泰弘、松井正芳(二通)、小原秀夫(二通)、中西太一、三橋正男、宮田晃、杉野安志、榎本喜一(二通)、谷口勇三郎、赤井義之、山家和男、市川常寿、宮本佳嗣、石原博(二通、同年六月二四日付けは二丁表四行目から同丁表最終行までを除く。)、丹野幸弘、中島忠博に対する各質問てん末書

一  八代尚(同年五月二一日付け)、岡田悦雄、黒田宏正、池田次三郎、小山治男、荒井實、辻田昌弘、宮下久幸、世良務、小寺輝彦、石田博見、平松政美、福嶋徳和、川村輝男、浜崎克雄、龍田武男各作成の「確認書」と題する書面

一  収税官吏作成の現金預金有価証券等現在高確認書

一  収税官吏作成の被告会社不二興業に関する査察官調査書二〇通

一  同被告会社作成の法人税確定申告書謄本三通

一  大阪法務局茨木出張所登記官作成の法人登記簿謄本

一  収税官吏作成の同被告会社に関する脱税額計算書三通

一  検察官作成の「法人税法違反事件の秘匿金額の修正について」と題する書面

判示冒頭及び第四ないし第六の各事実につき

一  福田正員、畑野雅嘉、大森直樹、吉田源治、香田ヤス子(二丁表一〇行目から三丁裏終わりから三行目までを除く。)の検察官に対する各供述調書

一  収税官吏の福田正員、讃岐文人、田中泰二、西田耐子、岡田知之、仲瀬武(二通)、中橋芳美、畑野雅嘉、大森直樹、香田ヤス子(四丁裏一四行目から五丁裏終わりから七行目まで、六丁表一四行目から六丁裏終わりから五行目までを除く。)に対する各質問てん末書

一  田村勝、横山隆雄、押部治、徳本幸治(同年八月二三日付け)、神宮晃彦、山本博夫、高橋正男、堀義昭各作成の「確認書」と題する書面

一  収税官吏作成の被告会社不二商事に関する査察官調査書一九通

一  同被告会社作成の法人税確定申告書謄本三通

一  大阪法務局枚方出張所登記官作成の法人登記簿謄本

一  収税官吏作成の同被告会社に関する脱税額計算書三通

一  大蔵事務官作成の証明書(証拠等関係カード検察官請求分番号112)

判示冒頭及び第七ないし第九の各事実につき

一  収税官吏の清田清治、佐藤英機、山口伝、高橋定徳、古沢速治に対する各質問てん末書

一  田中祥三、八代尚(同年五月一八日付け)各作成の「確認書」と題する書面

一  収税官吏作成の被告人葉山幸治に関する査察官調査書四通

一  同被告人作成の所得税確定申告書謄本三通

一  収税官吏作成の同被告人に関する脱税額計算書三通

(法令の適用)

被告人葉山彰子の判示第一、第二、第四、第五の各所為は、いずれも行為時においては、昭和五六年法律第五四号脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律による改正前の法人税法一五九条一項に、裁判時においては、改正後の法人税法一五九条一項に該当するが、犯罪後の法令により刑の変更があったときにあたるから、刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、判示第三、第六の各行為は、いずれも改正後の法人税法一五九条一項に該当し、判示第七、第八の各所為は、いずれも行為時においては、昭和五六年法律第五四号による改正前の所得税法二三八条一項に、裁判時においては、改正後の所得税法二三八条一項に該当するが、犯罪後の法令により刑の変更があったときにあたるから、刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、判示第九の所為は、改正後の所得税法二三八条一項に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は、刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により最も犯情の重い判示第六の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人葉山彰子を懲役二年に処し、情状により同法二五条一項によりこの裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

被告人葉山彰子の判示第一ないし第三の各所為は、いずれも被告会社不二興業の業務に関してなされたものであるから同被告会社については、判示第一、第二の各所為につき右昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一六四条一項により改正前の法人税法一五九条一項の罰金刑に、判示第三の所為につき右昭和五六年法律第五四号による改正後の法人税法一六四条一項により改正後の法人税法一五九条一項の罰金刑に各処すべきところ、情状により法人税法一五九条二項を適用し、以上は、刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により合算した金額の範囲内で、同被告会社を罰金二八〇〇万円に処する。

被告人葉山彰子の判示第四ないし第六の各所為は、いずれも被告会社不二商事の業務に関してなされたものであるから同被告会社については、判示第四、第五の各所為につき右昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一六四条一項により改正前の法人税法一五九条一項の罰金刑に、判示第六の所為につき右昭和五六年法律第五四号による改正後の法人税法一六四条一項により改正後の法人税法一五九条一項の罰金刑に各処すべきところ、以上は、刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により合算した金額の範囲内で同被告会社を罰金一三〇〇万円に処する。

被告人葉山彰子の判示第七ないし第九の各所為は、いずれも被告人葉山幸治の業務に関してなされたものであるから、被告人葉山幸治については、判示第七、第八の各所為につき右昭和五六年法律第五四号による改正前の所得税法二四四条一項により改正前の所得税法二三八条一項の罰金刑に、判示第九の所為につき右昭和五六年法律第五四号による改正後の所得税法二四四条一項により改正後の所得税法二三八条一項の罰金刑に、各処すべきところ、以上は、刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により合算した金額の範囲内で同被告人を罰金六〇〇万円に処し、同法一八条により右罰金を完納することができないときは金五万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 金山修)

修正損益計算書

自 昭和53年9月1日

至 昭和54年8月31日

〈省略〉

〈省略〉

修正損益計算書

自 昭和54年9月1日

至 昭和55年8月31日

〈省略〉

〈省略〉

修正損益計算書

自 昭和55年9月1日

至 昭和56年8月31日

〈省略〉

〈省略〉

修正損益計算書

自 昭和54年3月1日

至 昭和55年2月20日

〈省略〉

〈省略〉

修正損益計算書

自 昭和55年2月21日

至 昭和56年2月20日

〈省略〉

〈省略〉

修正損益計算書

自 昭和56年2月21日

至 昭和57年2月20日

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

修正損益計算書(合計)

自 昭和54年1月1日

至 昭和54年12月31日

〈省略〉

修正損益計算書(不動産所得)

自 昭和54年1月1日

至 昭和54年12月31日

〈省略〉

修正損益計算書(合計)

自 昭和55年1月1日

至 昭和55年12月31日

〈省略〉

修正損益計算書(不動産所得)

昭和55年1月1日

昭和55年12月31日

〈省略〉

修正損益計算書(合計)

自 昭和56年1月1日

至 昭和56年12月31日

〈省略〉

修正損益計算書(不動産所得)

昭和56年1月1日

昭和56年12月31日

〈省略〉

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